鍼灸の大学と専門学校通うならどっち?それぞれの魅力について徹底解説

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この記事を読んで分ること

  • 専門学校は3年、大学は4年の修業期間が必要
  • 社会人でも鍼灸師を目指すことは可能
  • 学費を抑え即戦力として現場を目指すなら専門学校
  • 医療者として技術・教養を身に着けるなら大学

鍼灸師になるには何年かかるの?

鍼灸師になるためには厚生労働省が管轄する国家試験に合格し、はり師・きゅう師として登録する必要があります。
結論、どれだけ最短でも3年以上修業する必要があります。

年に1度行われるはり師・きゅう師国家試験ですが、誰しもが自由に受験することが出来るものではなく、一定の受験資格を満たす必要があります。

この受験要件をまとめると文部科学省または厚生労働省が認めた養成施設にて3年以上修業し、必要な知識及び技能を修得したものが受験できるとされています。
実際、令和4年9月21日に厚生労働省より告示された、はり師きゅう師国家試験の施行の受験資格にも記載されており、国家試験であることから根拠法となるあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律にも規定されています。

第二条
免許は、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第九十条第一項の規定により大学に入学することのできる者(この項の規定により文部科学大臣の認定した学校が大学である場合において、当該大学が同条第二項の規定により当該大学に入学させた者を含む。)で、三年以上、文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、文部科学大臣の認定した学校又は次の各号に掲げる者の認定した当該各号に定める養成施設において解剖学、生理学、病理学、衛生学その他あん摩マツサージ指圧師、はり師又はきゆう師となるのに必要な知識及び技能を修得したものであつて、厚生労働大臣の行うあん摩マツサージ指圧師国家試験、はり師国家試験又はきゆう師国家試験(以下「試験」という。)に合格した者に対して、厚生労働大臣が、これを与える。
一 厚生労働大臣 あん摩マツサージ指圧師の養成施設、あん摩マツサージ指圧師及びはり師の養成施設、あん摩マツサージ指圧師及びきゆう師の養成施設又はあん摩マツサージ指圧師、はり師及びきゆう師の養成施設
二 都道府県知事 はり師の養成施設、きゆう師の養成施設又ははり師及びきゆう師の養成施設

ーーe-GOV ,あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律,2022年10月8日最終アクセス.

鍼灸の大学と専門学校の主な違いは?

養成施設には「文部科学省管轄の鍼灸大学」または「厚生労働省管轄の鍼灸専門学校」2つが存在し、いずれかの養成施設での修業課程を経る必要があります。

主に重要視されるであろう違いが明確な部分を以下の表にまとめてみました。

要素/養成施設大学専門学校
修業期間4年間
(一部3年間)
3年間
修業時間9:00-19:30(全日制)9:00-12:00(昼間部)
13:00-17:00(昼間部)
18:00-21:30(夜間部)
学費
(入学金別)
600万-800万300万-500万
学校数11校87校
学習内容国家試験受験を満たす規定時間
+α鍼灸医学+一般教養
国家試験受験を満たす規定時間
学生数20名-60名10名-30名
得られる資格学士専門士
鍼灸大学と鍼灸専門学校の主な違い

要素を比較して並べるだけでもそれぞれに特色があるかと思います。
これら大学と専門学校の違いについてより詳しくまとめていきます。

鍼灸大学について

鍼灸の大学には何年通う?

鍼灸大学で過程を経るのであれば4年間です。
国家試験の受験における修業期間は最低3年と定められているのを考えると1年分長く過ごすこととなります。

高校を卒業して鍼灸師への進路を検討している現役学生は大学進学も視野にいれてもいいかもしれません。

また社会人であっても、過去に大学を卒業していたり専門学校を卒業していた場合は、編入学が可能となるかもしれません。
医学分野を専攻して学んでいた場合は基礎科目の一部や、一般教養科目など単位の読み替えが認められるかもしれません。

編入が認められ大学2年生からスタートすることが出来たならば、3年間で国家試験の受験資格を得ることが出来ます。
その一方で大学を卒業する(養成施設を卒業して十分な技能を有すると認められる)ことも要件となるため、3年間で4年分の科目を勉強することを理解しておく必要があります。
なので2年次編入が認められた際には、本来1年生で学ぶ科目を同時に並行して学んでいくことから、一部の科目の読み替えが認められているとはいえ少しウエイトは重くなるかもしれません。

いずれにせよ自分が対象者になるかどうか、単位の読み替えがどこまで可能なのかどうかは、志望する大学にて確認をしてみるのが良いかと思います。

鍼灸の大学の学費は?

鍼灸大学の学費は600万-800万程度で、これらに加えて入学金や教材費が別途必要となってきます。
入学金であれば30-50万程度、教材費は10-30万程度、実習準備費(白衣やワクチン接種(実習時必要:B型肝炎・MRワクチン等)費用など)10万程度を目処に準備しておけば良いかと思います。
また交通費・家賃・交際費など、普通に生活を送る中で必要な生活費も計算に入れておくと良いかと思います。

これら学費に関しては必須となるお金なので準備しなければなりませんが、場合によっては日本学生支援機構奨学金や教育ローンを活用したり、また大学によっては授業料免除制度が準備されていたりするので、これらも活用しつつ大学進学を目指すのが良いかもしれません。

・奨学金について
奨学金には国の奨学育英事業を行う日本学生支援機構の貸与奨学金があります。
無利子で貸与できる第一種奨学金と有利子で貸与する第二種奨学金があり、それぞれ審査の後貸与の可否が決まります。
また、近年では返済義務のない給付型奨学金も始まり選出されれば、入学金の免除や授業料の減額などの支援を受けることもできるので参考にしてみてください。
ーー 独立行政法人日本学生支援機構奨学金制度の種類と概要2022年10月9日最終アクセス

・教育ローンついて
教育ローンについては、国の教育ローンと信販会社が提供する学費ローンがあります。

国の教育ローン
日本政策金融公庫が行っており、保護者を対象として学費の融資を受けることが出来ます。限度額があるので注意してみてください。
信販会社の学費ローン
銀行など金融業を営む企業が融資する形となります。大学が提携している場合もあるので相談してみるのも良いかもしれません。
ーー日本政策金融公庫教育一般貸付 (国の教育ローン),2022年10月9日最終アクセス.

・授業料免除制度ついて
学校によっては授業料免除制度を導入しており、成績優秀者や経済困難者などを対象に学生の支援をおこなっている場合があります。
進学希望の大学に授業料免除制度や大学内奨学生制度がないか確認してみると良いかと思います。

専門実践教育訓練給付金について
大学教育課程においては、教育訓練給付制度の対象となっている学校はないようです。
ーー厚生労働省,教育訓練給付制度2022年10月10日最終アクセス

いずれにせよ進学を決めた時点で大学に学費の相談をするのが良いかと思います。
融資にも時間がかかるため、早めの行動が重要です。

鍼灸の大学の講義や実習は?

鍼灸大学では全日制を取っていることから9:00-19:30にかけて開講されていることが多いです。
またカリキュラムは履修制でもあるので、必修と呼ばれる国家試験に伴って必ず行わなければならない科目以外は自由に選択できる場合が多いです。

講義について
講義は鍼灸医学関連科目だけでなく、一般教養も学びます。

一般教養では、語学やコミュニケーション論など、大学で学術を学ぶ意義や生活環境に関連する要素など、社会一般的な視点を持ち合わせた講義が開講されています。

鍼灸医学関連科目では、西洋医学の基本でもある解剖学(身体の構造)や生理学(身体の機能)、医学概論・各論及び病理学(病気の機序や成因)に加えて、東洋医学の基礎となる概論(陰陽論や五行論)や経絡経穴学(ツボ)について学びます。
これらは専門学校と共通で、修業課程として開講しなければならないカリキュラムとなります。
大学の場合は上記の講義に加えて、基礎医学の理解をより深めるための化学や生物学や物理学、西洋医学の周辺知識を学ぶ薬理学や外科学や心理学や診察学などが展開されています。
更には大学が理想とする人材を育てるために必要とされる、特色を加えたカリキュラムが追加されています。
またこれらと同時にゼミに所属し卒業研究を行うことで、科学に基づく研究の基礎や研究室のテーマの専門的な知識を身に着けていくこととなります。

またこれらに加えて別途附帯教育がある場合はこちらでも追加での講義が開講されていたりします。

実習について
実習は各学年、前期・後期それぞれ2-5コマ程度は開講されています。
基礎的な鍼や灸の操作を学ぶ課程は1年生時点で必修科目として学んだ後に、実際の疾患モデルを模した形で、治療理論や実際の選穴など2-4年生にかけて実技授業が進んでいきます。
鍼灸治療の幅を広げる通電療法や棒灸や箱灸を学べるのは勿論、物理療法に関する講義も存在します。

また実習での選択科目では、東洋医学に基づく様々な治療法に乗っ取った講義が展開されていたりと、多岐に渡る治療法を学ぶことが出来ます。

3-4年生になると大学に附属している臨床施設で、実際の患者さんに就きながら現場実習を行ったり、提携している病院や大学病院での学外実習もあります。

卒業要件には一般教養科目も含まれるため、鍼灸医学だけでなく医学全体を中心とした講義が開講されています。
また専門学校とは異なり、選択科目もあったりと同じ鍼灸を学ぶ課程の中でより深く学びを得ることが出来ます。

鍼灸の大学の受験資格は?

鍼灸大学に入学する場合は原則高校卒業または同等の水準を証明する必要があります。
大学に進学するにあたり、文部科学省は大学入学資格について条件を提示しています。

大学(短期大学を含む。大学院を除く。)の入学資格は以下のいずれかに該当する方に認められます。(2019年1月時点)
1.高等学校又は中等教育学校を卒業した者(法第90条第1項)
2.特別支援学校の高等部又は高等専門学校の3年次を修了した者(法第90条第1項)
3.外国において、学校教育における12年の課程を修了した者
7.高等学校と同等と認定された在外教育施設(文部科学大臣認定等在外教育施設(高等部を設置するもの)一覧)の課程を修了した者(施行規則第150条第2号)
12.高等学校卒業程度認定試験(旧大検)に合格した者(施行規則第150条第5号) (なお、18歳に達していないときは、18歳に達した日の翌日から認定試験合格者となる。)
13.大学において個別の入学資格審査により認めた18歳以上の者(施行規則第150条第7号)

ーー文部科学省,大学入学資格について 一部抜粋,2022年10月10日最終アクセス.

一部例外として13.大学において個別の入学資格審査により認めた18歳以上の者と在りますが、基本的には高校を卒業または高校を卒業と同等の水準である必要があります。
実際の受験時にはこれらの証明証(卒業証明書や高等学校卒業程度認定試験合格証明書等)を提出する必要があります。
これら書類は受験申込が始まった際にすぐに準備できるものではないので、受験が決まり次第早めに準備をしておくようにしておいてください。
また不安であれば入学資格審査基準を満たしているかどうかを進学先の学校で相談しておくと良いかと思います。

大学受験は書類を提出して終わりではありません。
何かしらの入学試験を受験し合格する必要があります。
各学校によって特色があるので、受験希望学校の入試要項やパンフレット等を確認すると良いでしょう。

・総合型選抜
以前はAO入試と呼ばれていた受験方式です。
志望理由書・調査書などの書類選考に合わせて、面接・小論文などによって選抜する試験です。当然ながら筆記も求められる場合があります。
特に問われるのは大学が掲げる教育理念でもあるアドミッション・ポリシーに合致するかどうかがポイントとなります。言い換えるならばどのような学生を求めておおり、将来どういった鍼灸師になってほしいかを明文化した文章でもあるので、総合型選抜にて受験を検討している場合は、理念を理解しておく必要があります。
学校によっては受験要件に、事前面接やオープンキャンパスの参加を課している場合もあるので、事務局に確認することをお勧めします。

・学校推薦型選抜
以前は公募推薦入試や指定校推薦入試と呼ばれていた受験方式です。主な対象は高校生向けとなります。

公募推薦入試
大学が求める条件の合致をもって、高校から推薦する形で受験する方式です。評定平均(3年間の成績)や課外活動実績や生活態度などから総合的に判断し、校長から推薦されます。
指定校推薦入試
大学が指定した高校の生徒だけが対象となる推薦入試です。学内で行われる選考に通過することで、指定校推薦の枠を得ることが出来ます。
また公募制特別推薦選抜としてスポーツ実績や文化活動に秀でている人を選抜する試験も準備されている場合があります。

・ 一般選抜
一般入試や共通テストを利用して入学する方式です。
2月頃に行われることが多い、入学を決める最後のチャンスです。

入試に合格して初めて鍼灸師としての一歩を踏み出すことが出来ます。まずは確実に入学できるようにな準備をしておきましょう。

鍼灸の大学で得られる資格は?

鍼灸大学を卒業することで得られる資格は大きく4つで「学士号(学位)」・「はり師きゅう師国家試験受験資格」・「機能訓練指導員」・「その他資格(アスレティックトレーナー他)」です。

・学士号(学位)
学位は一定の学術を修めた学術上の能力を証明する資格になります。
大学を卒業することによって得られる学位は「学士」であり、学士を持っていることでしか進めない進路が存在したり、また企業によっては給与額にも差が表れます。

大学の上位過程である大学院に進学するには、学士資格が基本的には必要とされており、将来研究者や教育者を視野に入れる際には必須に近い条件となっています。
学位には様々ありますが「学士号」<「修士号」<「博士号」と、それぞれより専門的な学術能力を証明する資格の証明となっています。
上述しましたが大学院の進学には基本的には「学士」が必要です。専門学校で得られる学位は「専門士」であるため、基本的に大学院には進学出来ないので注意が必要です。

・はり師きゅう師国家試験受験資格
鍼灸学校に進学する意味の主目的は国家試験受験資格です。
大学を卒業しても国家試験受験資格が与えられるだけで、実際には国家試験に合格しなければ鍼灸師にはなれません。

・ その他の資格
鍼灸学校の附帯教育において、周辺資格や受験資格を取得することもできます。

機能訓練指導員(介護保険法によって指定される職種)
はり師・きゅう師免許を取得しかつ6か月以上機能訓練指導に従事した経験をもって付与されます。
通所介護・デイサービスなどおにいて、「日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行う能力を有する者」として従事することが出来ます。

アスレティックトレーナー(民間資格/公益財団法人日本スポーツ協会)
プロスポーツ現場においてトレーナーとして活動する際に必要な知識やスタッフ間連携において必要とされる知識を証明する資格です。
ーーJSPO(公益財団法人日本スポーツ協会),アスレティックトレーナー,2022年10月10日最終アクセス.

その他(民間資格)
健康運動実践指導者・CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト受験資格)・スポーツプログラマー・福祉住環境コーディネーター・社会福祉主事任用資格・薬膳漢方検定など各学校によって異なります。

学位と進学について
一部記事には専門学校卒業でも大学院に進学出来るとありますが、鍼灸専門学校卒業の学位で大学院への進学が認められている学校はありませんので注意してください。

大学校について
大学名称には”大学”が含まれていますが、鍼灸の就業過程においては、文部科学省管轄の専門学校である場合があります。卒業後に取得できる資格は”専門士(医療専門課程)”の場合は、大学院への進学要件に当てはまらない場合があるので、事務局などに確認することをお勧めします。

一方で専門学校であれば並行して取得できる資格(あん摩マッサージ指圧師や柔道整復師)などは、取得できないのがデメリットとなります。

周辺資格・Wライセンスについて
・鍼灸資格と並んで同様な課程を経る必要がある「あん摩マッサージ指圧師」という資格があります。残念ながら私立大学において「あん摩マッサージ指圧師」を取得できる学科は存在しません(視覚障害者を対象とする教育機関として国立の筑波技術大学のみ)。「あん摩マッサージ指圧師」が必要であるならば、専門学校課程を経るか、卒業してから通いなおすといった選択肢のみとなります。
・専門学校によっては、昼間部に鍼灸科(鍼灸マッサージ科)に通学し、夜間に柔道整復科に通うことで、複数資格を取得するコースがあったりします。残念ながら大学においてはこれらのコースは存在せず、また原則大学は複数の学校に通う二重学籍を認めていないことから、卒業後に再度進学する必要があります(系列校であれば入学金や学費の一部免除、単位の一部読み替えが認められる場合があります)。

鍼灸大学を卒業することで一般就職も可能となりまた、大学院の進学を検討出来たりとしたことのキャリアの面で持ち合わせる価値は高くなります。追加で「あん摩マッサージ指圧師」や「柔道整復師」の医療資格を取得する際には、単位の読み替えが認められたり、また専門学校の夜間コースに入れば、日中は鍼灸師として働きながら資格取得に望むことも出来ます。

鍼灸の大学に進学するメリット・デメリットは?

鍼灸大学に進学する圧倒的なメリットは、医療人としての視野を広げられることやキャリアの幅広さではないでしょうか。
鍼灸にとらわれず、様々な視点から自分たちの仕事を見れることはこれからの社会に求められる視座の高い視点を学ぶことが出来ます。
また修業年数も長いことから、豊富な実習やより病気に着目した実践的な教育は当然ながら、科学的・学術的な学びに加えて鍼灸医学研究であったりと、鍼灸業界の最先端を学ぶことが出来ます。

一方で取得資格は鍼灸のみに絞られてしまうことで「あん摩マッサージ指圧師」や「柔道整復師」の取得を目指す際には、卒業後に通いなおす必要があったり、修業年数分の学費が高くなってしまうことがデメリットでしょうか。

鍼灸大学を卒業することは、鍼灸師としての技術力・医療者リテラシー・医師や看護師や介護系職員など多職種のチーム医療の中で鍼灸師として活動する視座・科学的思考を得ることが出来るでしょう。

鍼灸専門学校について

鍼灸の専門学校には何年通う?

鍼灸専門学校で過程を経るのであれば3年間です。
国家試験の受験にまでの最低修業期間となります。

高校を卒業して鍼灸師への進路を検討している現役学生はもちろん、社会人経験を経てから再進学の選択肢として専門学校を検討してもいいかもしれません。

基本的には大学とは異なり修業課程や日数がぎりぎりとなる場合が多いため、過去に大学を卒業していても単位の読み替えのは認められないと思っておいた方が良いでしょう。
また大学と同様に、国家試験の受験資格を得るためには卒業する(養成施設を卒業して十分な技能を有すると認められる)ことが要件となります。

鍼灸の専門学校の学費は?

鍼灸の専門学校の学費は300万-500万程度で、大学よりも年数が少ない分安くなる傾向にあります。
またこれらに加えて入学金や雑費がかかりますが、入学金が10-30万程度、教材費は10-30万程度、実習準備費(白衣やワクチン接種(実習時必要:B型肝炎・MRワクチン等)費用など)10万程度と、入学金以外は大学と大きく差はありません。

専門学校の進学に際して注意しておかなければならないのが、実習の際に使用する道具を自分で準備しなければならない場合があります。
実習に際して使用する鍼や灸は基本的には使い捨てとなります。実習の際には都度購入して準備しておくことを求められる場合もあるので進学前に確認しておきましょう。これらの費用は3年間で5-10万程度(場合によってはもっとかかる場合もある)と考えておいた方が良いかと思います。

社会人経験者が鍼灸の専門学校を選択する理由の一つに、厚生労働省が推進する教育訓練給付制度の専門実践教育訓練があります。全ての専門学校がこの制度の対象になってる訳ではありませんが、これらを活用することで専門学校の学費を抑えることが出来ます。

専門実践教育訓練
・特に労働者の中長期的キャリア形成に資する教育訓練が対象となります。
・受講費用の50%(年間上限40万円)が訓練受講中6か月ごとに支給されます。
・資格取得等をし、かつ訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、受講費用の20%(年間上限16万円)が追加で支給されます。
・なお、失業状態にある方が初めて専門実践教育訓練(通信制、夜間制を除く)を受講する場合、受講開始時に45歳未満であるなど一定の要件を満たせば、別途、教育訓練支援給付金が支給されます。

ーー厚生労働省,教育訓練給付制度2022年10月9日最終アクセス

一定条件(1年以上の雇用保険加入者)を満たす必要がありますが、給付が認められた際の給付額は最大224万円で費用の70%(年間上限56万円・最長4年)を支援してくれる制度となってます。
鍼灸の専門学校であれば3年ですので、最大168万円支給されることとなります。学費でいうと半額ほどで就業出来ることから魅力的な制度の一つとなっています。

以下に参考リンクを記載しますので一度目を通しておくと良いかもしれません。
参考:厚生労働省-教育訓練給付制度のご案内(外部ページリンク、PDF)
参考:厚生労働省-教育訓練講座検索システム(外部ページリンク)

専門実践教育訓練以外の奨学金などについては鍼灸の大学の学費は?(ページ内リンク)を参照下さい。

鍼灸の専門学校の講義や実習は?

鍼灸専門学校では昼間部・夜間部と様々な形態で開講されています。昼間部であれば9:00-18:00にかけて、夜間部であれば18:00-21:30にかけて開講されています。また昼間部は1部と2部に分かれている場合もあったりするので、自身の都合に合わせた時間で修業することが可能です。
カリキュラムに関しては、3年間で国家試験の受験資格を得なければならないため、基本的にすでに決められていると考えておいた方が良いでしょう。

講義について
専門学校で行われる講義は、鍼灸医学関連科目のみです。

鍼灸医学関連科目では、西洋医学の基本でもある解剖学(身体の構造)や生理学(身体の機能)、医学概論・各論及び病理学(病気の機序や成因)に加えて、東洋医学の基礎となる概論(陰陽論や五行論)や経絡経穴学(ツボ)について学びます。
これらは大学と共通で、修業課程として開講しなければならないカリキュラムとなります。

これらに加えて、各専門学校の特色を加えたカリキュラムが一部ありますが、3年という限られた時間であること、また1日の講義コマ数が2コマであるなど時間の上限があるため、大学とは異なっているのが現状です。

また別途附帯教育がある場合は別日程で講義が開講される場合があるようです。

実習について
実習は各学年で、2-4コマ程度は開講されています。
基礎的な鍼や灸の操作を学びつつ、実際の疾患モデルを模した形で治療理論や実際の選穴などを実技を通して学んでいきます。
実習、特に実際の治療理論を学ぶ講義では、開業鍼灸師が教員として教えに来ていたりと、より現場即した内容を学ぶことが出来ます。

2年生の後半から3年生にかけては、臨床施設で実際の治療院で現場実習を行うことで、即戦力として活動できることをを目的に実習が行われています。
専門学校によっては臨床施設を持っておらず、外部実習先での実習となることもあります。

卒業要件には一般教養科目も含まれるため、鍼灸医学だけでなく医学全体を中心とした講義が開講されています。
また専門学校とは異なり、選択科目もあったりと同じ鍼灸を学ぶ課程の中でより深く学びを得ることが出来ます。

鍼灸の専門学校の受験資格は?

鍼灸専門学校に入学する場合は原則高校卒業または同等の水準を証明する必要があります。
一部の専門学校は中学卒業でも受験できる場合がありますが、鍼灸専門学校においては、原則高校卒業以上であることが求められます。

大学(短期大学を含む。大学院を除く。)の入学資格は以下のいずれかに該当する方に認められます。(2019年1月時点)
1.高等学校又は中等教育学校を卒業した者(法第90条第1項)
2.特別支援学校の高等部又は高等専門学校の3年次を修了した者(法第90条第1項)
3.外国において、学校教育における12年の課程を修了した者
7.高等学校と同等と認定された在外教育施設(文部科学大臣認定等在外教育施設(高等部を設置するもの)一覧)の課程を修了した者(施行規則第150条第2号)
12.高等学校卒業程度認定試験(旧大検)に合格した者(施行規則第150条第5号) (なお、18歳に達していないときは、18歳に達した日の翌日から認定試験合格者となる。)
13.大学において個別の入学資格審査により認めた18歳以上の者(施行規則第150条第7号)

ーー文部科学省,大学入学資格について 一部抜粋,2022年10月10日最終アクセス.

一部例外として13.大学において個別の入学資格審査により認めた18歳以上の者と在りますが、基本的には高校を卒業または高校を卒業と同等の水準である必要があります。
実際の受験時にはこれらの証明証(卒業証明書や高等学校卒業程度認定試験合格証明書等)を提出する必要があります。
これら書類は受験申込が始まった際にすぐに準備できるものではないので、受験が決まり次第早めに準備をしておくようにしておいてください。
また不安であれば入学資格審査基準を満たしているかどうかを進学先の学校で相談しておくと良いかと思います。

大学受験は書類を提出して終わりではありません。
何かしらの入学試験を受験し合格する必要があります。
各学校によって特色があるので、受験希望学校の入試要項やパンフレット等を確認すると良いでしょう。

・総合型選抜
以前はAO入試と呼ばれていた受験方式です。
志望理由書・調査書などの書類選考に合わせて、面接・小論文などによって選抜する試験です。当然ながら筆記も求められる場合があります。
特に問われるのは大学が掲げる教育理念でもあるアドミッション・ポリシーに合致するかどうかがポイントとなります。言い換えるならばどのような学生を求めておおり、将来どういった鍼灸師になってほしいかを明文化した文章でもあるので、総合型選抜にて受験を検討している場合は、理念を理解しておく必要があります。
学校によっては受験要件に、事前面接やオープンキャンパスの参加を課している場合もあるので、事務局に確認することをお勧めします。

・学校推薦型選抜
以前は公募推薦入試や指定校推薦入試と呼ばれていた受験方式です。主な対象は高校生向けとなります。

公募推薦入試
大学が求める条件の合致をもって、高校から推薦する形で受験する方式です。評定平均(3年間の成績)や課外活動実績や生活態度などから総合的に判断し、校長から推薦されます。
指定校推薦入試
大学が指定した高校の生徒だけが対象となる推薦入試です。学内で行われる選考に通過することで、指定校推薦の枠を得ることが出来ます。
また公募制特別推薦選抜としてスポーツ実績や文化活動に秀でている人を選抜する試験も準備されている場合があります。

・ 一般選抜
一般入試や共通テストを利用して入学する方式です。
2月頃に行われることが多い、入学を決める最後のチャンスです。

鍼灸の専門学校で得られる資格は?

鍼灸専門学校を卒業することで得られる資格は大きく4つで「専門士号(称号)」・「はり師きゅう師国家試験受験資格」・「機能訓練指導員」・「その他資格(アスレティックトレーナー他)」です。

・専門士号(称号)
専修学校の修了者に対する社会的評価の向上と生涯学習の振興を目的に定められる称号になります。
専門学校を卒業することによって得られる称号は「専門士」で高等専門学校(高専)と同等とされます。
専門士は大学を卒業した学士とは異なり、上位過程である大学院に進学することは出来ません。また企業によっては給与額にも差があります。

「専門」と名のついている通り、専修学校において専門的に技術を学んだとされる証明です。
鍼灸専門学校を卒業して得ることが出来るのは「専門士(医療専門課程)」で、日本国内においては大学2・3年次への編入学が認められます。

・はり師きゅう師国家試験受験資格
鍼灸学校に進学する意味の主目的は国家試験受験資格です。
大学を卒業しても国家試験受験資格が与えられるだけで、実際には国家試験に合格しなければ鍼灸師にはなれません。

・ その他の資格
鍼灸学校の附帯教育において、周辺資格や受験資格を取得することもできます。

機能訓練指導員(介護保険法によって指定される職種)
はり師・きゅう師免許を取得しかつ6か月以上機能訓練指導に従事した経験をもって付与されます。
通所介護・デイサービスなどおにいて、「日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行う能力を有する者」として従事することが出来ます。

アスレティックトレーナー(民間資格/公益財団法人日本スポーツ協会)
プロスポーツ現場においてトレーナーとして活動する際に必要な知識やスタッフ間連携において必要とされる知識を証明する資格です。
ーーJSPO(公益財団法人日本スポーツ協会),アスレティックトレーナー,2022年10月10日最終アクセス.

その他(民間資格)
健康運動実践指導者・CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト受験資格)・スポーツプログラマー・福祉住環境コーディネーター・社会福祉主事任用資格・薬膳漢方検定など各学校によって異なります。

学位と上位課程進学について
一部、他の記事では専門学校卒業でも大学院に進学出来るとありますが、原則は鍼灸専門学校を卒業することによって与えられる学位によって大学院へ進学することは認められておりません。
過去には、文部科学省が定める修士課程・博士課程(前期)の入学要件の一つ”指定された専修学校の専門課程”として存在していたものの、現在は当該課程存在しておりません。
ーー文部科学省,文部科学大臣指定専修学校専門課程一覧2022年10月10日最終アクセス

これらに加えて専門学校で資格取得を目指すメリットに周辺資格の取得やWライセンス制度が挙げられます。

あん摩マッサージ指圧師について
鍼灸資格と並んで同様な課程に「あん摩マッサージ指圧師」という資格があります。マッサージを行うための国家資格の一つで、鍼灸と同じく厚生労働大臣免許です。
一部の専門学校では、鍼灸科に合わせてあん摩マッサージ指圧師科を併設しており、課程を修了することで鍼灸師免許に加えててあん摩マッサージ指圧師を取得することが出来ます。
修業期間は変わらず3年で学費も大きく変わることはありませんが、昼間部に多く設置されている傾向が多いようです。

Wライセンス制度について
鍼灸科に加えて柔道整復科を併設する一部の専門学校がWライセンスコースを設定している場合があります。
このWライセンスとは、昼間部に鍼灸科(鍼灸マッサージ科)に通学し、夜間に柔道整復科に通学することを示します(昼間部・夜間部が逆転する場合もあり)。
修学期間は3年または4年(1年間ずらして別科へ再入学)と専門学校によって様々です。
別科であることから学費負担は増えることとなりますが、同じ専門学校に入学することで入学金の免除や学費の免除など優遇を受けられる場合があり、単純に倍額の学費がかかる訳ではありません。

複数資格を取得しようとすると勉学の負担は増えますが、鍼灸だけでなく複数資格を同時に取得したい場合は専門学校を視野に検討すると良いかもしれません。

鍼灸の専門学校に進学するメリット・デメリットは?

鍼灸専門学校に進学するメリットは、やはり短期間での資格取得と経済的な負担を考慮しながら修業出来ることではないでしょうか。
鍼灸に特化して学ぶことは、社会に出て鍼灸師として活動していく為に必要な知識を身に着けることが出来ます。また実習も組み込まれていることから、国家試験資格取得を目指しながら、治療の技術も学ぶことが出来ます。

一方で、限られた時間と授業数の中で国家試験受験を目指すため、授業の幅が狭かったり、そもそも授業の内容では物足りなさを感じたりする場面も多々あるかと思います。
個人で情報を収集しに行く、受け身でない積極的な姿勢が求められます。

まとめ

  • 専門学校は3年間に対して大学は4年間の修学期間がある
  • 学費を抑え即戦力として現場を目指すなら専門学校がおすすめ
  • 医療者として技術・教養を身に着けるなら大学がおすすめ
  • 大学卒業の場合は進学や一般企業へのキャリアも広がる

それぞれ大学と専門学校のメリット・デメリットが伝わりましたでしょうか。
自分に合った形で学校を選ぶのが良いかと思います。

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